基本方針
泌尿器疾患全般についてエビデンス(臨床試験によって証明された医学的根拠)に準拠した医療を実践しています。病気の治療にのみ傾倒するのでなく、病人を治療する事を心がけています。すなわち病気の治療によって本来の肉体的・精神的機能が極力損なわれることがないような医療を提供できるように努力しております。
手術支援ロボット ダビンチ<da vinci>
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主な診療内容
①RARP(ロボット補助腹腔鏡下前⽴腺摘除術)、RAPN(ロボット補助腹腔鏡下腎部分切除術)
⼿術⽀援ロボット ダビンチを使⽤して前⽴腺癌、腎癌の⼿術を⾏っております。従来の開放⼿術、内視鏡⼿術に⽐べ⼿術侵襲が少なく保険適応になっております。出⾎量が少なく、術後疼痛が少なく、合併症も少ないのが特徴です。微細な構造まで⾒えるため神経温存、正常腎温存が可能になっております。症例により温存可能範囲が異なりますのでご相談ください。
②MRI/US融合狙撃前⽴腺⽣検
前⽴腺癌は、2015年には我が国においても新規患者数が男性の第⼀位になりました。前⽴腺癌は⽣検(前⽴腺から組織を採取して⾏う病理検査)によって確定診断が下されます。約20年前から早期発⾒⾎液マーカーとしてPSA採⾎検査が実施されてきましたが、前⽴腺癌でない症例もPSA異常値を⽰す事が多く、PSA検査のみの異常で⽣検を⾏った場合の癌的中率は約30%にすぎませんでした。当科では前⽴腺⽣検を⾏う前に3Tesla multiparametric MRIを実施して前⽴腺癌の疑われる病巣を検査した上で、MRI画像上の疑い病変を超⾳波画像上に投影して同部から組織を採取する先進的医療を実施しています。この⽅法を2015年1⽉から導⼊し、前⽴腺癌の的中率は75%に向上し、過剰な前⽴腺⽣検を⾏わずにすむようになりました。
③⾼リスク前⽴腺癌に対するTrimodality治療
早期に診断された前⽴腺癌は癌の⽣物学的悪性度から低・中・⾼リスクの3群に分類して、個々の治療⽅針を決定します。この中で⾼リスク症例は再発・転移のリスクが⾼く、単⼀の治療での成績は不良である事が判明しています。前⽴腺全摘術を⾏った場合、約50%の再発率で追加の放射線治療が必要となります。根治性を⾼めるために広汎切除と拡⼤リンパ節郭清が試みられていますが、有益性は確認されていません。⾻盤内リンパ節を含めた体外照射でも同様に再発率は⾼いことが分かっています。こうした中で最近注⽬されている新しい治療法は内分泌療法、⼩線源治療、体外照射の3種類の治療を最初から併⽤するTrimodalityという⽅法です。当科ではこの⽅法を積極的に取り⼊れて⾼リスク群では⼿術療法よりも優れた治療成績が得られています。
④レーザー内視鏡治療
ホルミウムレーザーによる内視鏡治療を尿路結⽯、前⽴腺肥⼤症に対して⾏っています。尿路結⽯に関しては、硬性・軟性腎盂尿管ファイバースコープとバスケット鉗⼦を⽤いて完全抽⽯を⽬指しています。前⽴腺肥⼤症に関しては標準的内視鏡⼿術であるTURPとレーザー核出術HoLEPを症例ごとに吟味した上で適宜使い分けています。
⑤蛍光ナビゲーションによる筋層⾮浸潤膀胱腫瘍⼀塊切除(PDD-TURBO術)
筋層⾮浸潤膀胱癌(NMIBC)は膀胱癌の約70%を占め、TURBT施⾏後の再発率は31〜78%と報告されています。再発をくり返すうちに⾼異型度または浸潤性の癌に進展し⽣命予後が不良となることが危惧されます。再発を防ぐには①腫瘍を全て完全に摘除すること②術中に腫瘍細胞を散布しないことが重要です。①の原因としてTURBTで視認困難な微⼩病変や平坦病変(CIS)が残存することが考えられます。②の原因としては、切除電極が腫瘍本体に直接切り込むことで腫瘍細胞が膀胱内に播種することが考えられます。この2点を克服するために、当科ではPDD-TURBOという新しい術式を開始しました。PDDとは光線⼒学診断(photodynamic diagnosis)の略称で、昨年薬価収載されたアミノレブリン酸塩酸塩(アラグリオⓇ)を⼿術前2〜3時間に内服させ、腫瘍細胞に多量に蓄積するプロトポルフィリンⅨ(PPⅨ)を⻘⾊光(400〜410nm)で励起し⾚⾊蛍光を発する⽅法です。今回購⼊した最新型の独Karl Storz社製PDDシステムでは、⽩⾊光と⻘⾊光の変換が瞬時に⾏えるため、診断補助の⻘⾊光と切除の⽩⾊光を巧に使い分けながら、切除断端の腫瘍の取り残しや⽩⾊光で視認困難な平坦病変や微⼩病変を残らず切除することができます。TURBOとはTransurethral resection of bladder tumor in one pieceの略称で、PDD補助下に正確に切除マージンを決め、特殊なReal bipolar電極を⽤いて腫瘍を⼀塊にして切除します。これにより術中の腫瘍細胞播種が最⼩限に抑えられます。⾼精度の診断と確実な腫瘍除去が患者さんの予後改善をもたらすものと確信しています。
⑥ハンナ型間質性膀胱炎
難病指定とされているハンナ型間質性膀胱炎に対する広汎電気凝固併⽤⽔圧拡張療法を⾏っています。
臨床試験、臨床研究等
臨床試験(治験)、臨床研究に関しては、未承認ではあるが将来的に標準的治療となる新薬、手術手技・器具をいち早く患者さんに使用できるように前向きに実施しております。詳細はHPをご参照下さい。
掲載論文等
Androgen deprivation therapy-related fracture risk in prostate cancer:an insurance claims database study in Japan
著者名:Hisashi Matsushima
雑誌名:Jornal of Bone and Mineral Metabolism
掲載年:2024年
Validation of JSBMR’s CTIBL manual for Japanese men receiving androgen deprivation therapy for prostate canter
著者名:Hisashi Matsushima
雑誌名:Jornal of Bone and Mineral Metabolism
掲載年:2023年
Two cases of prostate canter with disseminated carcunomatosis of the bone marrow treated with novel hormonal agents
著者名:Keina Nozaki, Hisashi Matsushima, Hiyo Obikane, Ryohei Nishimoto, Ryo Tanaka, Takeru Morishige, Tomoko Masuda and Haruki Kume
雑誌名:IJU Case Reports
掲載年:2023年
Simultaneous robot-assisted laparoscopic surgery for prostate and rectal cancer
著者名︓Daisuke Yamada, et al.
雑誌名︓Japanese Journal of Endourology and Robotics
掲載年︓2023年
Fluorescence Detection of Prostate Cancer by an Activatable Fluorescence Probe for PSMA Carboxypeptidase Activity
著者名︓Daisuke Yamada, et al.
雑誌名︓Journal of the American Chemical Society
掲載年︓2019年