総合診療内科について
「総合診療内科って何?」という質問は決して少なくないと思います。「総合診療内科」と銘打つからには、おそらく内科全般をオールラウンドに診る科と想起されるでしょう。そのイメージは確かに正解なのですが、ここで「総合診療内科」の存在理由をより明確にご説明したいと思います。
現代医療の高度化、細分化は、それまで治すことの難しかった疾病を軽快あるいは完治させられるようになったという点で恩恵に浴しているところは事実なのですが、一方で、医師の専門分化による偏在も指摘されています。特に21世紀に入って著しく高齢化が進んだ日本では、それに伴って基礎疾患の多様化や複雑化、認知症、新規治療による副反応などが増加し、複数の疾患を抱え込んでいる患者さまも珍しくなく、日常診療での個々の訴えは多種多様です。そうなると、特定の臓器・疾患に限定した内科系各科専門医による医療のみでは対応困難で、心身を総合的に診る全人的な医療が求められます。その部分を補って実践するのが当科の役目です。もう一つ大切なことは、疾患を的確に鑑別した上で、高度な専門的医療が必要とあらば速やかに内科系専門診療科に紹介する、言わば機能化した橋渡しの役目も担っています。
以上が総合診療内科の主な役どころです。
診療内容と特色
当科は時代の医療ニーズに沿って平成24年に設立された比較的新しい科です。各内科専門医の資格を持っていても、自身の専門分野にとらわれず、今日まで内科関連疾患を原則お断りすることなく診てきました。もとより幅広い内科知識が要求されますが、近年のようなストレス社会、高齢化社会にあっては心の病や認知症も診ないわけにはいかなくなりました。原因のはっきりわからない症状を、一人の患者さまがいくつも持ち合わせているケースが増え、それらの中には不安障害・パニック障害、うつなどが潜んでいることがあります。また、厚生労働省の報告によりますと、2020年には65歳以上人口の実に15%が認知症を有しているという予測があり、すでに社会問題化している認知症は避けて通れません。いずれも当科の守備範囲で賄いきれるものではありませんが、心理・社会的背景を踏まえながら適切で最良の医療を提供できるように心がけております。なお、認知症につきましてはその背景疾患の鑑別と方向付けまでとし、幻覚・妄想・徘徊・暴言・暴力などの周辺症状は認知症専門医や精神科に依頼することになります。
当科の基本方針
- 最前線の標準的な医療を実践します。
- 高度で専門的な医療が必要と判断すれば当該専門科に紹介する横のつながりを重視します。
- 診断がつかなくても全身状態が不良であれば入院の受け皿になるよう努めます。
- 地域の中核病院として病診連携、病病連携を重視します。患者さまをご紹介していただく一方で、診断がつき病状が安定すればご紹介元やかかりつけ医にフォローアップをお願いします。
- 他職種とのコミュニケーションを大切にし、多様な医療サービスを包括的にスムーズに提供できるよう協力します。